あまり新しい本を読めなかった一ヶ月だった。事ある毎に泥酔していた為だと思う。泥酔している時は馴染みの本ばかりを読んでしまう。泥酔しているというのは正常な状況ではないので、状況との均衡をとるために馴染みの本を手に取ってしまうのだろう。
読んだもの
面白かった。一気読みした。緩急のうまさが読み易さとおもしろさに繋がっているのだと思う。この人はどうしても関西の言葉を登場人物に喋らせたいのだな。一巻目まではドラマの『トリック』を見ているような気分になっていたが、その後そのような雰囲気が薄くなり、不気味で恐しいものとの戦闘になっていった。作中の進行と同様に妙な暗示を掛けられているようで怖かった。ドタバタ劇で終わるのかと思っていたら集団ヒステリに陥り全てが自分達を殺しにやってくるといった境遇からの脱出みたいな凄まじいものになり、ユーモアがありつつも陰惨だった。アル中描写がまだカリカチュアなのは氏がまだ酒を飲めていた頃だったからかなと思ったが、刊行年を見たら『今夜、すべてのバーで』より後だったので、リハビリか憧憬といった感じだったのかもしれない。