``一意な文字列''

雑多な事柄

読んだもの (2022-08)

終戦日記一九四五 (岩波文庫 赤 471-2)
戦争最後の年のハンガリー戦くらいまでの状況におけるベルリンの生活模様が描かれていて、これはもしかして国民突撃隊あたりまでやるのかと緊張してたらベルリンを脱出してて意外だった。したたかに生活したり占領軍の都合で右往左往としたり、敗戦国の住民のひとつのケースという感じがした。作中で東京大空襲が2月某日みたいに書かれているが、手持ちの資料(東京都戦災誌)には該当しそうなものがなく、いったい何時を指していたのだろう。

告白 (中公文庫)
『しらふで生きる』を読んでから酒を飲むということについて思い悩むことが多くなったと飲み友達と酒を飲んでて話してたら勧められた。思弁的な事柄を充分に表現できる言葉を持てればよかったのにね、言葉は道具であり武器だね。しかし思考と言葉とが一致したときには確かに破滅が訪れ(酒屋をぶち壊すシーンはかなりヤバくて大好き)、言葉は兵器だね。

雑草で酔う~人よりストレスたまりがちな僕が研究した究極のストレス解消法~

サボテンを育てたくなった。

獄中で酔う 逮捕という非日常がもたらす意識変容と愉快な留置場生活

この本を読んでて寝落ちしたときに見た夢がこれだった。けっこう強烈な印象だったのだと思う。ただしこの本は留置所生活ではある。

NSA 上 (ハヤカワ文庫SF)
作中でいう「プログラミング」の教科書が非常に女性的な扱いになっているのは現代のコンピュータ系の本が男性的なのだということを暗に匂わせているのだろうか。
RSHA ができたのはポーランド戦が始まってからじゃなかったか? とかなんかそういう細かいことが気になってしまった。ガジェットとその効果を示す特徴的なエピソード以外はだいたい史実をなぞっている為だと思う。

NSA 下 (ハヤカワ文庫SF)
ここまで読んで「ニッティングパターン」というのがいわゆるライブラリの言い替えだということにやっと気付いた(デザインパターンみたいなやつなのかと思ってなんか話が繋がらんぞと悩んでた)。負けても地獄で勝っても地獄、脳死しても地獄でシステムをハックしても地獄、結末は苦笑しかできない。脳いじりの技術的理屈付けがニューラルネット「だけ」に読めてしまうのは読み手の問題だろうか。

黒い家 (角川ホラー文庫)
解説にもあるが、狂人が包丁を持つと怖い。正確な文面は忘れたが京都市は都市と自然とが人が快適に暮らせる絶妙なバランスで成立しているみたいな一文があり、非常にその通りだと思った。

読んだもの (2022-07)

政治の約束 (ちくま学芸文庫)
そもそも『人間の条件』あたりからちゃんと読めてなかったことに気付いた。アレント的な語義の労働 / 仕事 / 活動のなかで、政治とは活動の中に含まれるはずだが今(執筆当時)はなんかそうでもなく、じゃあどうすればいいのか、そもそもなんでこうなっちゃったんだろうね、みたいなことをつらつら書いた、という感じか。

ジム・スマイリーの跳び蛙: マーク・トウェイン傑作選 (新潮文庫)
気軽に読めた。『スミス対ジョーンズ事件の証拠』が酒場の中の『藪の中』という感じでよかった。

地図と拳 (集英社文芸単行本)


かなりよかった。誤解を恐れずに言えば本邦における『慈しみの女神たち』という感じがした。満洲国の崩壊がアッサリしていたのはちょっと物足りなかったが、しかし誰もが『慈しみの女神たち』を書けるわけではない。
インタビュー*1 も読んだが当事者意識を持って戦争を想像する(乱暴な要約)とあり、このような物語が出てきてくれるなら伊藤計劃も少しは安心して眠れるんじゃないかと思った。
余談だが『昭和16年夏の敗戦』まんまの描写が作中に出て来、参考文献にこれが挙げられていたのを見て笑顔になった。

嘘と正典 (ハヤカワ文庫JA)
文庫化ずっと待ってました。ありがとうございます。『最後の不良』がとても好き。逸脱した先が均質化されてゆくことの考察。

ホロー荘の殺人 (クリスティー文庫)
『プラットフォーム』での引用箇所がどういった文脈なのかを知りたくて。読書のない人生は人生だけで満足しないといけなくなるので危険みたいなことを『プラットフォーム』の主人公は言ってて(正確な引用ではない)、この言葉がとても好きなのだが、こんかい引用箇所の文脈がわかり、このひとは読書があっても危険な人生を送っており示唆的な引用だったのだ、ということがわかった。
そういった動機だったので推理小説としては一切読めておらず、労働者のしょっぱさ、有閑階級のズレ、芸術家の救われなさ(しかし悲劇ではないように思える)を味わっていた。今思うとカリカチュアな感じもする。

しらふで生きる 大酒飲みの決断 (幻冬舎文庫)


宿酔で街を歩いていたときに立ち寄った本屋で見付けて読もうと思った。宿酔とその回復期に考えていること(より正確には願っていること)を文章にしてもらった感じがしている。
この本を読んで数日間はなんとなく飲酒を控えていたのだが、そのあと普通に酒を飲んでしまい、俺は「正気」の側にしか居られないんだ、「狂気」の世界のなんたる遠さよ、みたいな(大袈裟な)気分になった。

女のいない男たち (文春文庫)
『ドライブ・マイ・カー』が煙草モクモク映画だと知り、まずちょっと原作を読んでみようかなと思ったので。しっとりした気分になった。しっとりした気分になった、では読後感をまったく表現できていないのだが、それでも「しっとりした気分になった」がふさわしいと思った。

読んだり観たりしたもの (2022-06)

ほとんど宿酔でくたばっていた一ヶ月であった為マトモに本を読めていない。

読んだもの

平家物語(下) (角川日本古典文庫 Y 11)

両陣営ともにそれなりにゴタゴタしながら戦争してらっしゃる。そして思い出したかのように雅な断章が差し込まれる。
壇ノ浦のハナシが結構短かったのは意外だった。読み終えて思うが『慈しみの女神たち』の最後の章を読んでいたときと同じアタマの動きをしていた気がする。壇ノ浦以降も物語が続いていることに驚きがあったが、要するに敗戦処理なので、とても沈鬱。

観たもの

ヘルタースケルター
原作を読んだので。
検事さんが結構好きなのだが、これを実写でやるとなんだか痛々しい人物になってしまうのだと悲しくなった。
ベト9が BGM の発狂シーンはキューブリックの仰々しいオマージュという感じで、原作では早々に断念された「攻撃」のシーンが花やしきをバックにキリキリと続いてゆくのも併せ、何故か笑ってしまった。
小さなタイガー・リリィが凝縮される描写は原作以上にグロテスクでとても好き。『暇と退屈の倫理学』を読んでから観てよかったと思う。

リバーズ・エッジ


好き。原作がかなり好きで、ガッカリ映画だったらどうしようとちょっと尻込みしていたのだが、完全な杞憂だった。
原作における登場人物のモノローグをメタ的なインタビューで置き換えるのは斬新だった(先行事例はありそうだが)。登場人物の再現度がすごい。原作の痛みを伴う空気感がそのまま映像になり、痛みを伴う映画になっている。

読んだり観たりしたもの (2022-05)

読んだもの

平家物語(上) (角川ソフィア文庫)
京から福原に遷都されるあたりからだんだん面白くなってきた。それ以前はフーンこんなもんかという感じでパラパラ読み飛ばしていた。宮中の情景に関心を持てず、ゴタゴタが始まると面白く感じるあたり、エンタメしか求めていないということがわかる。
なお古文や旧字や旧仮名遣いについての知識が一切無いのに本文が古文で解説も旧字旧仮名遣いという代物を買ってしまい、パラパラ読むのにも難渋している。これと同じことは以前『ドイツ戦歿学生の手紙』でやった。過去から学んでいない。

掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 (講談社文庫)
アル中本だった。わたしの将来の可能性としてアル中は普通に有り得ると考えており、後学のためにアル中系の物語は積極的に読むことにしている。
しかしこれはエグい。暴力、閉塞感。短編集なので毛色の違うものもあるが、すべてを覆う陰惨さは濃い。

論理哲学論考 (岩波文庫)
課題図書。予想以上に数学数学してた。

娼婦の本棚 (中公新書ラクレ)
フラッと立ち寄った本屋で偶然見掛けてこれは絶対に面白いやつだと霊感があり買った(レジに持ってゆく勇気は出ず Amazon で買った。本屋さんごめんなさい)。
夜の世界も昼の世界も、キレイもキタナイも生きてきた筆者が「むさぼるように」読んだ本のいくつかを開陳してくれるというもの。『ぼくんち』と『pink』が気になっている。ちなみに『リバーズ・エッジ』はかなり好き。

ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)
民族浄化」は PR のタマモノだみたいな聞き齧った情報がどれだけ事実なのかを知りたくなって。
情報伝達のオペレーションリサーチという感じ。「事実」をどのように使えばより大きな利益を生むか、そういった流れを堅実に掴んでゆくプロの話。現代の戦争は総力戦というが、その戦闘の中には情報、「事実」の主導権をいかに握るかという戦闘もあるのだなと思った。

本と鍵の季節 (集英社文庫)
読んでて胃がキリキリする。米澤穂信は内蔵に悪い。書下しの作品を含め、この本だけでかなり綺麗に物語がオチている印象があったので、続編が出ると知ってなんだか意外な気持ちになった。『さよなら妖精』の新装版で追加された物語のように読者の首筋を撃ち抜くような物語を楽しみにしています。

観たもの

孤狼の血 LEVEL2
皆さん目力が強い。目力が強いので眼を潰してしまう。見ることや見られることが物語の主軸になるのは平成初頭という舞台以上に現代の象徴という感じがした。

コリーニ事件(字幕版)
随分前に原作小説は読んだ。成仏ラストでとてもしんみりした。よい締めだった。
いっぽう映画版では殺された人間が元武装 SS と明言されていたが、原作では SS としか呼ばれていなかったように思う。若くして SS 少佐(だか、大隊指導者だか、Sturmbannfürer)になったのは SD 記章もあるし、たぶん博士持ちなど高学歴な為だろう。しかし古参闘士章(だったか? 右腕にある山型のやつ)は相当古いナチ党員じゃないと受章できないはずで、WWI ごろの生まれの SS 将校がもらえるものだろうか? そんなことを考えながら観ていたので、イタリアのシーンはあまり集中できなかった。

読んだもの (2022-04)

言語が違えば、世界も違って見えるわけ (ハヤカワ文庫NF)
面白かった。表現できる対象そのものには言語の間で差は無い(と考えられる)が、表現の「し易さ」には言語によっても時代によっても結構差があるね、というのをとうとうを説明してゆく内容と読んだ。

浅草キッド (講談社文庫)
映画のほうが気になっていたが、そいつを観る為に Netflix のアカウントを作るのもなあ、と思っていたところで本屋に平積みされているのに気がついて。歴史の資料みたいな感じで読んだ。

暇と退屈の倫理学(新潮文庫)

非常に面白かった。確かにとくに何か指針を示すものではないが、こういった誘導をされることである種の救いのようなものが得られたような気がする。この本の影響で『パンセ』を買ってしまい、あまりの厚さに当惑している。
虐殺器官とプラットフォームの断片的な描写でしかボードリヤールについて知らなかったが、本書で取り上げられている内容をみるにとても面白い思想だと思った。

なめらかな世界と、その敵 (ハヤカワ文庫JA)
文庫化待ってました。ありがとうございます。『ひかりより速く、なめらかに』が好き。なめらか、というキーワードから表題作に何らか連絡するのかと思ってたら全然そんなことは無かった。どうしても自分の罪を告解するみたいな描写があると好きになってしまい、これは何故なのだろう。そういう欲求がじぶんにもあるのだろうか。

読んだもの (2022-03)

サバイバー〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

何十回と読んでハナシのスジをだいたい把握している本でもない限り、あとどれくらい枚数が残ってんだろうとページをパラパラめくってしまうクセがあるので、最終ページから始まる体験はとてもよかった。いや体験云々ではなくそういう演出ではあるのだが。
陰鬱な閉塞を粉砕するタイラー・ダーデンはおらず、しょっぱい現在もしょっぱい未来もサバイブするに値しない。エージェントのブッチギレ具合はよかった。

スノウ・クラッシュ〔新版〕 上 (ハヤカワ文庫SF)スノウ・クラッシュ〔新版〕 下 (ハヤカワ文庫SF)
この項目を書いててはじめて表紙を横に並べて一枚絵になるのだと気付いた。ありがとうはてなブログ

シュメール云々のところまでは正直ダレ場と感じてしまった。しかしそれ以降は引き込まれた。きっと伊藤計劃のイメージソースのひとつなのだろうなあ。
コンピュータネットワークが紡ぎ出す現実とは異なるオルタナティブな世界みたいなやつをいつの間にかうまく想像できなくなっていた自分に気付き、インターネットは現実の一要素、それもかなり恐ろしい要素という認識になってしまったのだな、と(物語と一切関係無いが)寂しくなった。

読んだもの (2022-02)

『慈しみの女神たち』を読み直していたせいで大して本を読めなかった。『重力の虹』のあとではこいつの長大さや晦渋さがまったくマトモに感じるので不思議である。

悪の華 (集英社文庫)
酔って遊びに行った友人宅の本棚を引っ掻きまわした時(わたしは酒癖が非常に悪いのでこうなる場合がある)に堀口大學訳か何かのやつがでてきて、面白そうだなあと思い買ったもの。べつにこれは堀口大學訳ではない。
「酒の魂」がとてもすき。

日の名残り (ハヤカワepi文庫)
飲み友達とカズオ・イシグロの話をしていたときに薦められて。これ以外には『わたしを離さないで』しか読んだことがない。
冗談についての小説という触れ込みで読みはじめ、たしかに冗談についての小説であった。それなりに時間が経ったあとで当時を後悔し泣く人間の情景があまりに美しすぎ、そういった情景が眼前に拡がるだけで好きになってしまう。そういった短絡した回路がわたしのアタマの中にはある。