``一意な文字列''

雑多な事柄

空想

素面

謝辞:この文章を書くにあたり、題材、機会、および酒席を提供してくださった、友人 O 氏と T 氏へ感謝します。 都市が火に包まれた時、人々は水辺に集う。随分前に教えてもらった葡萄牙(ポルトガル)の里斯本(リスボン)とやらで起きた大地震のときもそう…

ビール

黒褐色の瓶の口が上のほうへ離れてゆくのを眺めていたとき、ぼくは自分がテーブルの上にいる事に気付いた。 ふたつある灰皿のうち、片方はまだ空っぽだ。もう一方には既に何本か吸殻が転がっており、縁にはまだ火をつけたばかりらしいタバコが置かれている。…

酒瓶を割る

ショットグラスの縁いっぱいまで注がれたウイスキーに最後のダメ押しで一滴を加える。まだ溢れない。ウイスキーの瓶はこれで空になった。空になった瓶を抱え、台所の冷蔵庫の脇に無造作につっこまれているビニール袋の中から二枚、厚手のものを引き抜く。瓶…

だから俺は酒を飲む

飲み屋を出たら雪がちらついていた。今日はいやに冷えるなと思っていたらこれだ。夜空は暗い灰色の雲がぶ厚く一面に広がっている。 溜息をついてコンビニに向かい、ビニール傘を買った。すぐ使うので包装をここで処分して下さい、とレジの店員に言うと怪訝な…

彼の名は連休

じゃあそろそろ帰り支度でもするかね。そう言って彼は洗濯してハンガーに吊るしたままだったシャツとデニムをとり、脱衣所に向かった。 あ、と少し間の抜けた声を出し、私は本棚の上の置き時計に目をやる。二十三時五十分を示していた。 うん、と私がこれま…

泥酔

ビールジョッキを持ち上げたら親指が落ちてしまい、あやうくビールジョッキも取り落としそうになった。落ちた親指を見れば土色だ。もうそんなに飲んだか。飲酒すると時間を忘れてしまう。 週末の夜は大抵行き付けの飲み屋で酒を飲んで過している。俺は煙草を…