完全に酔っ払っているが手元の本が数式で語る本のため数式に当たる度に酔いが下がって助かっている
— 之貞 (@ngsksdt) 2023年2月10日
などとほざいていた割に*1いちばん面白いと感じたのは構成的社会契約論のくだりだった。
線型代数的(グラフ理論的といったほうが正確かもしれない)なオハナシが続く PICSY や分散投票のあたり、つまりシステムを構築するための議論のところは今にして思えばチンプンカンプンだったことを告白しておく。
わたしは数学の教科書めいたものを読むのが本当に苦手で、それをなんとかしたくて数学の教科書をパラパラめくる「数学観光」とでも言いたくなるようなことを去年くらいからやっている。それはともかく。
なめらかな社会というのは高度なシステムによって下支えされた社会がその構成要素をあまねく構成員に細分化して配布するといったものと読め、これはほとんど『ハーモニー』ではないかと思った。
これを書きながら調べたらハーモニーのほうが先に世に出ていたので、伊藤計劃はほんとうに凄く、この本にしてもグラフ理論的なシステムが力を持っていたゼロ年代の成果のひとつではあるのかもしれない。
もっとも古びた内容というわけではなく、むしろ本当に10年前が初出なのかと驚くほどに現代的である。
『すべての男は消耗品である。』由来。事実としては知っていたがその内実を知らなかったものの数々。
駄目な方面で有名な日本陸軍の参謀達がものすごい勢いで登場し、それらに対してデータで裏付けられた呪詛がこれでもかと続く。もちろん組織の問題に対しても説得力のある呪詛が続く。
極度の飢えと疲弊とで身体が崩壊し戦争の名の下で戦闘すらも出来ずに死んでいった軍人たちの話で腹がはち切れんばかりになる。
映画のほうの『軍旗はためく下に』で一瞬差し込まれていた自力で出来る行動の内容とそれに対応する死ぬまでの時間との言説
の元ネタのようなものが出ていたのは少し感動した。有名なエピソードなのかもしれない。
『餓死した英霊たち』で何回も言及されていたので気になり読んだ。
「推測するな、計測せよ」みたいな感じの金言があるが、これを戦争に対しておこなった一例だったのだと思う。そこからさらに一歩進み、計測した内容が本当に有意なのかという考察もできていないといけない。そしてその結果は恣意的に取り扱われてはならない。
身につまされる内容だった。読んでて普段の労働のことを考えてしまい寒気がした。