``一意な文字列''

雑多な事柄

読んだもの (2022-07)

政治の約束 (ちくま学芸文庫)
そもそも『人間の条件』あたりからちゃんと読めてなかったことに気付いた。アレント的な語義の労働 / 仕事 / 活動のなかで、政治とは活動の中に含まれるはずだが今(執筆当時)はなんかそうでもなく、じゃあどうすればいいのか、そもそもなんでこうなっちゃったんだろうね、みたいなことをつらつら書いた、という感じか。

ジム・スマイリーの跳び蛙: マーク・トウェイン傑作選 (新潮文庫)
気軽に読めた。『スミス対ジョーンズ事件の証拠』が酒場の中の『藪の中』という感じでよかった。

地図と拳 (集英社文芸単行本)


かなりよかった。誤解を恐れずに言えば本邦における『慈しみの女神たち』という感じがした。満洲国の崩壊がアッサリしていたのはちょっと物足りなかったが、しかし誰もが『慈しみの女神たち』を書けるわけではない。
インタビュー*1 も読んだが当事者意識を持って戦争を想像する(乱暴な要約)とあり、このような物語が出てきてくれるなら伊藤計劃も少しは安心して眠れるんじゃないかと思った。
余談だが『昭和16年夏の敗戦』まんまの描写が作中に出て来、参考文献にこれが挙げられていたのを見て笑顔になった。

嘘と正典 (ハヤカワ文庫JA)
文庫化ずっと待ってました。ありがとうございます。『最後の不良』がとても好き。逸脱した先が均質化されてゆくことの考察。

ホロー荘の殺人 (クリスティー文庫)
『プラットフォーム』での引用箇所がどういった文脈なのかを知りたくて。読書のない人生は人生だけで満足しないといけなくなるので危険みたいなことを『プラットフォーム』の主人公は言ってて(正確な引用ではない)、この言葉がとても好きなのだが、こんかい引用箇所の文脈がわかり、このひとは読書があっても危険な人生を送っており示唆的な引用だったのだ、ということがわかった。
そういった動機だったので推理小説としては一切読めておらず、労働者のしょっぱさ、有閑階級のズレ、芸術家の救われなさ(しかし悲劇ではないように思える)を味わっていた。今思うとカリカチュアな感じもする。

しらふで生きる 大酒飲みの決断 (幻冬舎文庫)


宿酔で街を歩いていたときに立ち寄った本屋で見付けて読もうと思った。宿酔とその回復期に考えていること(より正確には願っていること)を文章にしてもらった感じがしている。
この本を読んで数日間はなんとなく飲酒を控えていたのだが、そのあと普通に酒を飲んでしまい、俺は「正気」の側にしか居られないんだ、「狂気」の世界のなんたる遠さよ、みたいな(大袈裟な)気分になった。

女のいない男たち (文春文庫)
『ドライブ・マイ・カー』が煙草モクモク映画だと知り、まずちょっと原作を読んでみようかなと思ったので。しっとりした気分になった。しっとりした気分になった、では読後感をまったく表現できていないのだが、それでも「しっとりした気分になった」がふさわしいと思った。