``一意な文字列''

雑多な事柄

読んだり観たりしたもの (2021-12)

読んだもの

死ぬ瞬間 死とその過程について (中公文庫)
死にゆく人の死への態度についての考察。とても面白かった。理解と納得の違いを意識させられた。

トマス・ピンチョン 全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection) トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[下] (Thomas Pynchon Complete Collection)
読み終えるのに半年くらいかかったんじゃないかと思う。V2 からよくもまあここまで題材を拡げたものだ……。何度か読んではじめて物語が繋がる云々と解説にはあったが、ちょっとこれを再読する体力はもう残っていない。『慈しみの女神たち』が霞んでしまうくらいに濃い、濃いっていうか、なんなんだろうこれは? 混沌としか言い様がない。

観たもの

渇き。
役所広司がすごい頑張ってた。それだけ。

読んだり観たりしたもの (2021-11)

読んだもの

移動祝祭日(新潮文庫)
少々私的な理由があって読んだ。すこし前に小旅行に出掛け、戻ってからもアタマは旅先に残ったままでカラダだけが家に戻ってきてしまったという状態になりとても苦しい思いをし、これが「移動祝祭日」なのではないかと思ったというもの(ボカしすぎてて何のこっちゃという感じだ)。
わたしのは小旅行であってヘミングウェイのは生活だった。態度も思い入れも違いすぎて参考にならなかった。晩年になってパリの頃を思い返すことで祝祭の趣が強くなったのではないかと思った。わたしの小旅行もそうなるといいな。

観たもの

男たちの挽歌(字幕版)
宿題扱いだったもの。ただしよく考えると宿題だったのは「狼」がつくやつだった気がする。どことなく『BROTHER』っぽかった。

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 (レンタル版)
光学迷彩を纏って不可視になった逃亡者が船を踏み台にして逃げるシーンで誰も見えないのに船がグシャッと沈む描写がすごいなと思った。それくらい。組織に束縛されることを前提にして自嘲しているのが原作の印象とは違ってなんだか新鮮だった。

イノセンス
少佐の喪失で皆さん少しづつ何かを失なってしまったご様子。漢詩みたいなのが一般教養になっている世界はすごい。失ったものを知識で埋め合わせようとしても結局は虚しさが滲み出てしまう。

読んだもの (2021-10)

風の歌を聴け (講談社文庫)
10年くらい前の自分をブン殴ってでも無理矢理読ませておきたかった程度にはもっと早く読むべき、出会うのが遅すぎたと思った。しかし10年前に読んだとしてこの物語を楽しめただろうか? あまり自信はない。

1973年のピンボール (講談社文庫)
だいたい上と同じような感想の為省略。

羊をめぐる冒険 (講談社文庫)
村上龍感がでてきてちょっとビックリした。これもおおむね上と同じ感想。

沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち (集英社文庫)
色街は耐用年数を過ぎたらしい。しかしそれを歴史の一幕というだけで片付けるには沖縄は、そのまわりの群島は、傷を負いすぎた。今もなお続く時代の記録。

ダンス・ダンス・ダンス (講談社文庫)
ウエルベックだったら完全なるバッドエンドになって主人公は自殺を選ぶなと思った。ここまで読んで確かにウエルベック村上春樹の影響を受けていると納得できた。それまでは村上龍っぽくないかなと思っていた。

読んだり観たりしたもの (2021-09)

調子を崩して書くのが遅くなってしまった。遅くなってしまった割には特に読む量は増えていない。

読んだもの

白鯨 (下) (新潮文庫 (メ-2-2))
モービィ・ディックはデカくて恐ろしい。それを書かんとする為の怒涛の文字量だったのではと思った。『オン・ザ・ロード』を読んでて思ったが一時期迄の(というよりある種のジャンルの?)アメリカ文学においてはデカくて恐ろしいものについてひたすらペンを取っているな印象があり、その筆頭が北米大陸なのではと感じている。モービィ・ディックも鯨の形をとった北米大陸ではないのかしらと思った。

犯罪 (創元推理文庫)
よかった。読みやすい。

罪悪 (創元推理文庫)
良かった。読みやすかった。後書きを読んでて始めて気付いたが、読み易くて気持ちの悪いこの感じは本邦でいうと米澤穂信だ。

更級日記 (岩波文庫)
江戸川を渡ったら下総国から武蔵国隅田川はどこにいった?(確か隅田川以東が武蔵国に入ったのってけっこう最近ではなかったかしら)という程度の知識しかない状態で読むと痛い目をみるということがわかった。京に戻ってから以後のところはボンヤリ読み飛ばしてしまって申し訳のない気分になった。解説を読んでやっと書いてあることがわかったという程度の教養しかないのだ。

観たもの

ショーシャンクの空に(字幕版)
淪落の世界から脱出するには教養と技術が必要である。

読んだもの (2021-08)

コリーニ事件 (創元推理文庫)
ドイツの戦後は終わらない。終われない。Sturnbannfuehrer を SS 少佐とせず SS 大隊指導者としているのは法学寄りの歴史を意識しているからかしらと思っていたが、当人の所属が武装 SS じゃなくて一般 SS だったことを示しているのかと今ふと思った(以上付け焼刃の知識)。とにかくよい語り口だった。

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)月の影 影の海 (下) 十二国記 1 (新潮文庫)
友人に勧められて読んだ。海客の人々が呉軍港空襲の生き残りだったり安田講堂からの脱出組だったりで読んでて気持ち良くなってしまった。主人公の「とにかく家に帰るんだ」みたいなのは『ハンスの帰還』っぽく、90年代はこういうテーマが強かった時代だったのだろうか。

安田講堂 1968‐1969 (中公新書)
前から読みたいと思っていたもの。『月の影〜』の安田講堂から脱出した海客のエピソードで気持良くなってしまい、とうとう手を出すことにした。
学生たちの左翼思想は抑圧に対しての反抗の為の理論で、郷土愛的な愛国心とは共存できるという考えはなんだか意外だった。強権的な体制へのカウンターとしての闘争であった、というのが当事者(のうちのひとり)の見解で、戦争に負けても何も変わらなかったものは学生達の反乱でも何も変わらず、むなしい。何も変わらなかった、というのは後世の貧弱な視点からの感想であり、何かを変えるつもりだった当事者の意志にくらべれば塵のように吹き飛んでしまうものだ。

HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)
だいたい知ってる内容だったので読んでて復習をしている気分になった。しかし語りが非常に巧みで全く退屈せず、面白い。とにかくチェコスロバキアへの愛が溢れ出ている。批評パートはとくに良く、とりわけ『慈しみの女神たち』評は最高で、この作者のことを一発で好きになってしまった。

サイゴンのいちばん長い日 (文春文庫 (269‐3))
崩壊寸前の都市の行政はどこもかしこも似たようなものになるようだ。崩壊寸前の都市に暮らす市井の人々の振舞いにこそ個性が出る。

読んだり観たりしたもの (2021-07)

読んだもの

貨幣論 (ちくま学芸文庫)
『責任という虚構』に影響されて。カネの存立には具体的な根拠などなく、未来永劫にわたる信用への期待にもとづくものなのだ、というものと読んだ。もし今後マルクスを読む機会があったら副読本として手元に置いておくと便利そうだと思った。
便利な道具はその存立に根拠がなくても慣習が機能していれば不便なく使うことができる。

白鯨(上) (新潮文庫)


とくに Docker への知見はない(当然だ)。
表紙のデザインが違う。もっと猛々しいものだった。イシュメールたちはナンタケット島から捕鯨に出港した。俺は活字の海に投げ出され、活字の塊の波に飲まれアップアップしている。とにかく俺は鯨が好きなんだ、鯨と捕鯨について語らせやがれ、という筆者の溢れんばかりの気持ちを感じる。

生誕の災厄 新装版
いつだか読んだ『生まれてこないほうが良かったのか?』はこれのついでに読むつもりのものだった。良いフレーズがいくつもあったが読み終えたらどこに何があったか全部忘れた。付箋を貼るようなものでもないと思われ、とにかくこの本を読めば良いフレーズが得られるという軟派な印象を残しておくに留めようと思う。

観たもの

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』劇場先行通常版 Blu-ray
映画館で観た。伏線が全然回収されていない……と愕然としていたら三部作のうちの第一作という事を知って安堵した。わたしはガンダムについては素人である。
敵を迎撃する友軍の流れ弾(?)で市街地がメチャクチャになり人々が巻き込まれ死傷してゆくのは空襲国家であった日本の諸都市でも見られた光景のはずで、ああ銃後の生活も悲惨だよな、と思った。
劇中で描かれる主人公の内情を知るには逆シャアを観るとよいと有識者に勧められたが一夜漬けではどうにもならず、残り二部作のなかでなんとか素人にもわかるかたちで説明してもらえると嬉しいなあ、どうだろうなあ。無理かなあ。勉強しなきゃだめかなあ。

読んだり観たりしたもの (2021-06)

読んだもの

セロトニン

先生とうとう行きつくところまで行ってしまったか。ウエルベック第一部完、という感じをうけた。今までの物語で提示してきた救済や指針はここでは一切なく、とうとう「絶望」それ自体に足を踏み入れてしまった。過去の作品において救済が失われた人々は割合手早く自殺を選んだが、この物語の主人公は自分を見つめ切って、ある種の清算をし切ってから自殺を選んだ。思想の清算が主人公の清算として現れたのだろうか。極上の陰惨だった。

増補 責任という虚構 (ちくま学芸文庫)

とても面白かった。罪に対して罰をなすのではなく、罰することで罪を解決する、という視点は新鮮だった。責任を負う主体や自由意志というものは虚構で、ゆえに「責任」とはサンクションに足り得ず、罰の象徴たる生贄として存在する。『統治と功利』を読んでいたときにも思ったが、論理や背景知識についてゆけない面は多々あれど、このあたりのジャンル(法哲学になるのか?)は考察の内容がとても興味深い。不勉強なため肉付けの検証が自力ではできないのがとても悲しい。

生まれてこないほうが良かったのか? ――生命の哲学へ! (筑摩選書)

反出生主義の解説から反論そして今後の理論の発展や展望などを扱うとても面白い本。新しい分野の開拓という雰囲気がそこかしこに感じられ、読んでてワクワクした。印度哲学がとてもプラグマティックで興味深いものがあった。反出生主義のブームはよくわからないが、単なる絶望のミームとしてそれを捉えるよりは、如何様にして肯定 / 否定ができるか、何を見出し、どう考えてゆくかといった方向に舵をきってゆけるとよいなと思った。

中身のない絶望は救われず、なにより面白くないのだということがここまで歳をくうことでようやくわかってきた感じがある。しかし救われず面白くないと言われたところで絶望の当事者としてはそんなこと知ったこっちゃなく、絶望でしかない。もはやこの本の感想でもなんでもないが、そこへの答案は『斜陽』があると私的には思っている。

権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)

『責任という虚構』で参照されていたので。そこかしこのキーワードが古く時代を感じさせるが、内容はまったく古びていない。この本じたいの権威性を受け入れてしまいたくなるが、それはこの本の目指すべきところではなく、難しい。

観たもの

グッドフェローズ (字幕版)

ヒスった人間はこわい。「ヤクザの本質は暴力」云々というウシジマくんの一節を思い起こさせる映画だった。

裏切りのサーカス (字幕版)

なんとも微妙だったが観た人間のほうに問題がある。ゲイリー・オールドマンが老けていて衝撃を受けた。『レオン』の怪演のイメージしかなかったが、時期を考えれば老化するよな……。

インセプション(字幕版)

これもしかしたら過去に観て書いたかも。覚えてない。検索性の悪いこのブログである。でも書く。アイデア勝負で面白いなあと思った。

運び屋(字幕版)

家族と和解する道を選んだ『グラン・トリノ』といった感じ。北野武でいう『ソナチネ』がクリント・イーストウッドでいう『グラン・トリノ』だったのだろう。

フォレスト・ガンプ/一期一会 (字幕版)

よかった。ぜんぶうまくいった『カンティード』っぽい。